③からの続きです。前回では「GDPの成長、拡大こそが所得増と税収増の根本」だということを述べました。ではここで世界各国1995年~2015年までの20年間の「経済成長率(名目GDP変化率)」ランキングを見てみましょう。
藤井聡さんの本から抜粋します。
藤井氏「この図が明らかにしているように、日本の20年間の成長率は断トツの最下位だ。そもそも恐るべきことに、日本を除く全ての国の成長率は『プラス』であるのに日本の成長率だけがマイナスの水準なのだ。
(そして)世界平均はプラス139%、つまり、世界経済はこの20年間で約2.4倍に拡大している。(中略)ところがわが国日本の成長率は、圧倒的に低い「マイナス20%」だ。
つまりわが国の国民はかつてよりも「0.8倍」の水準までその所得水準を縮小させてしまったのである。つまり日本だけが世界の中で唯一『貧困化』してしまったのである。」
驚愕のデータですが・・・次は比較する国のデータを絞りつつ時系列でのGDPの推移をみていきます。(藤井さんの本から抜粋)
日本のGDPは1995年あたりから成長が止まり、その後は約500兆円で横ばいとなっています。
次に「一世帯当たりの平均所得金額の推移」のデータです。(藤井さんの本から抜粋)
上記のデータを見ると1990年代の中盤の664万円をピークに2013年の529万円まで135万円も下がってしまったことがわかります。続けて「政府の総税収の推移」のデータです。(藤井さんの本から抜粋)
税収に関しては1997年の消費税5%の導入を境に下がっていく傾向にありましたが、アベノミクス効果と輸出が好調だったこともあり、2012年あたりから税収が伸びていっています。そして2014年に消費税を8%に上げたところから税収の伸びが鈍化しているのがわかります。
ここで、上念司氏の本から「一般会計税収とGDP」のグラフを紹介します。
上念氏「名目GDPと税収の間の相関係数は0.82でした。一般的に相関係数が0.7以上あれば強い相関があると評価できます。つまり、バブル以降の日本においては、名目GDPが増えると税収も増えるという相関関係があることを示しているわけです。これに対して、税率を上げた時には税収が増えたり減ったりして安定しませんでした。」
実は数年前に、自分も財務省か内閣府のホームページのどちらかは忘れましたが、ここ20年分くらいの日本のGDPと税収を全部調べて書き出し、それぞれの数字が対応するか調べてみたことがありました。するとだいたい8割はGDPと税収は相関関係があることがわかりました。(表は細かくてすごくわかりずらいです)
以上見てきたことをまとめると、
1、日本のGDP成長率は世界各国の中でも最低である
2、GDPの成長率と「税収」「所得」はある程度相関関係にある
3、税収を増やしたいのであれば、「消費税」を増税するよりは、経済成長すなわちGDPの成長をこそ目指すべきである。
そして③の記事でも書きましたが、所得の減少という1次的な問題から発生する2次的な問題に対しての取り組みがずれているのではないかと思うのです。
改めて書きますが、所得の減少という1次的な問題から発生する2次的な問題として、
購買力低下による、企業の売り上げと利益の低下、共働き世帯の増加、給料の減少を補填するための副業による過労、リストラ、少子化、奨学金問題、うつ病、引きこもりの増加、未婚率の増加、生活保護の増加など。
これらの問題に対して、すぐ「問題を解決するために税金を投入すべき、だから増税だ」という発想が間違っていると思うのです。(ちなみに1997年の増税以来、税収が減ったために赤字国債を増やしている)
いろいろな要因があるとはいえ、そもそも税収や所得が減ったのはデータで見る限り、「消費税」の導入が最大の原因だったのですから、その原因を取り除けばかなり改善するはずです。
つまり所得や税収が減って社会保障のための税収が必要だとしても、その解決法は「増税」ではなく税収と所得の元になる経済を成長させることこそ真の解決になると思うのです。
結論として声を大にして言いたいのは「経済成長こそが真に国民の幸福の基になる、とともに最大の福祉政策でもある」ということではないでしょうか。
⑤に続きます。