前回のブログ⑧からの続きです。
前回の記事から引き続き、日本にある資産について述べてみたいと思います。
元財務官僚で嘉悦大学教授の高橋洋一氏は、「日本は世界一の政府資産大国」の中で、日本政府が保有しているJT(日本たばこ産業株式会社)株をすべて売却するべきと述べています。
政府は、国内のたばこ農家保護のために、JT法に基づき33%以上の株を保有していますが、高橋洋一氏に言わせると、「葉タバコを全量買わせることは、株とは関係なしに、法で定めれば済む話である」としています。
また、厚労省はたばこの危険性を指摘し、国民の健康増進を図ろうとする傍ら、財務省はたばこ企業の株を保有している政府の政策の矛盾を指摘し、「財務省は増税を主張する前に、財務大臣が持っているとされるJT株をすべて売却するのが筋だ」と述べています。
ちなみに、政府はNTTと日本アルコール産業株式会社の株も保有しています。
高橋洋一氏は、この両社の株式もすべて売却すべきとしていますが、日本アルコール産業株式会社が株を売りたがらない理由として、同社の役員に通産省の官僚OBが天下りしていることが、その理由だろうと指摘しています。
官僚の都合はともかく、政府には売却できる株があるということです。
次は有形固定資産についてです。
日本の国土に占める国有地は、4分の1くらいです。
以下、高橋洋一氏の「日本は世界一の政府資産大国」からざっくりとまとめてみました。
「・国有財産や、公共用財産などの有形固定資産180兆円のうち、国有財産に関しては、必要最小限のものは残して売却する方針が決まる。
・専門チームが検討した結果、売却、有効活用などの方針が出された独立行政法人の土地建物は、150カ所近くあり、「独立行政法人整理合理化計画」にまとめられる。
・官僚のサボタージュが始まり、その後政権が何回か変わり、計画は反故同然になる。財務省は国有地の原則売却の方針を覆す。
・国有財産を有効活用するための官民合同チームを編成する」
以上の出来事が2006年から、民主党政権になるまで起きた流れです。
高橋洋一氏はこれについて以下のように述べています。
「財務省は民間の知恵を借りるなどと口当たりのいい表現を使うが、政府所有を維持することにより種々の利権を確保したいという魂胆がミエミエだ。『官民合同チーム』という目くらましも効き、借金返済の鉄則である資産の売却という方針は、完全に否定されてしまった。
ところで、国有地を管理しているのは財務省の理財局だ。理財局には1000人以上の職員がいる。いってみれば財務省は、大手不動産会社でもある。国有財産を民間に売却すると、自分たちの行き場がなくなることを恐れているのかもしれない(中略)
皮肉な言い方をすれば、
資産を売ろうとしない政府は、それほど困っていないように見える。
それなのに消費税増税では、国民は到底納得できない」
また、坪単価の高い都心の一等地に建っている公務員宿舎もあり、売却できる有形固定資産はかなりあるということです。
次に上念司氏の「財務省と大新聞が隠す 本当は世界一の日本経済」から参照していきたいと思います。
上念司氏は対外純資産について以下にように述べています。
「日本全体が保有している純資産のうち多くの部分が海外に対する債権です。日本は対外債権国であり、外国から借金漬けになって財政が破綻したアルゼンチンやギリシャとは、全然状況が違います(中略)
2014年末で日本の対外純資産は366兆円です。(中略)5年間で約100兆円も増加しました。
しかも、これは(中略)負債を差し引いた純資産の金額です(中略)
この規模は他国にくらべてどれぐらいかというと、群を抜いてナンバーワンです。金額だけ見ればダントツで世界一です」
次に上念司氏は「国の貸借対照表(バランスシート)」と実質的な借金について述べています。
「『国の貸借対照表』は、財務省が毎年こっそり発表しています。ただ、負債の金額がほぼリアルタイムで発表されるのに対して、資産を含んだ貸借対照表は二年遅れでしか発表されません。そこには資産側の記載もあるため、なんとか人目に触れないようにしたいという涙ぐましい努力が見え隠れします(中略)
次に、資産側に重大な記載漏れがあることを指摘しておきましょう。それは日銀の資産です。
日銀は政府の子会社であり、その資産は基本的に政府に属するものです。(中略)
2015年3月31日時点で、日銀の資産は290兆円あることになります。この金額を先程計算した政府の純債務492兆円から差し引くと、残りは
202兆円になります。」
以上、日本の実質的な借金は、約
200兆円くらいとのことです。
『日本には1000超円以上の借金があり、このままでは日本が破綻する』の結論を、内閣官房参与・京都大学大学院教授の藤井聡氏の「『10%消費税』が、日本経済を破壊する」から一部抜粋します。
「そもそも、ギリシャ、(中略)北海道の夕張市において『政府の破綻』つまり『借金が返せなくなる』という事態が生じたが、それは彼らに『通貨発行権』がなかったからなのだ。
つまり、彼らはカネを返す時に、自分の権限でそのカネを『作る』ことが、何をどうやったってできなかったのであり、だからこそ『破綻』してしまったのだ(中略)
アメリカがドルでカネを借りても、日本が円でカネを借りても、中国が元でカネを借りても、返す時に政府の力でカネを容易く『調達』することができるのだ。
つまりどんな国でも、『政府』が『自分の国の通貨』でカネを借りている限り、そのカネを返済する時に、いとも容易くカネを『調達』して返すことができるのだ。なんと言っても、中央政府はその国の通貨を発行する権限、つまり通貨発行権を持っているからである。
だから、自国通貨建ての借金で破綻してしまったなぞという(お間抜けな)政府など、過去において存在しない。政府の破綻は、それは全て『外国の通貨』を借りていた場合に限られるのだ。(中略)
そして日本政府の借金は今、基本的に全て『円建て』の借金なのだ。だから、
日本政府が破綻するということなど、現実的にほとんど全く考えられないのである」
⑩に続きます