「ワードの『死後の世界』」(J.S.M.ワード/でくのぼう出版)は、1914年1月12日に、一週間前に亡くなった叔父のリッキー氏がワード氏の夢枕に立ち、以降、霊になったリッキー氏からの霊界通信を自動書記という形で地上のワード氏が文章化したものである。
正確には書籍の前半では自動書記の形を取っていると思われるが、中盤以降ワード氏はリッキー氏によって幽体離脱をして霊界を様々に見聞することになる。
この本で重要だと思われるところは、地獄に落ちた陸軍士官の体験談だ。
この陸軍士官は生前2人の人間を殺害。インチキ賭博、結婚詐欺、企業詐欺などを行った。交通事故で亡くなった後は、様々な地獄に行くことになる。
例えば…
「どん底の闇地獄」
「鬼に追われる地獄」
「残忍地獄」
「欲望地獄」
「唯物主義者の地獄」
「にせ紳士の俗物地獄」
他のスピリチュアル系の本でも地獄が取り上げられているものはあるかもしれないが、ここまでバラエティに富み、かつその地獄からどうやって抜け出したかまでが語られている本はそれほど多くはないのではないだろうか。
地獄に落ちた陸軍士官が体験した場所?で興味深い地獄をいくつか紹介する。
例えば地獄には「愛欲」「残忍」などそれぞれの特色にあった図書館があるそうだ。「残忍地獄」の図書館には「残忍」に関係した書籍、絵画スライド、映画などが揃っており、地上の人間が製作したものが地獄に供給されるそうである。
また地獄に来る本と、そうでない本の基準を地獄図書館案内人が語っており、人によってはヒヤリとするかもしれない。
また現代人にとって最も関心があるかもしれない(ないかもしれないが)不倫をする人はどの地獄に行くかもしっかり描写されている。
その部分をよ〜く読んで予習をしておくといいだろう。
ちなみに日本人で神様を信じていない割合は、100人中29人。
死後の世界を信じてない割合は、100人中60人である。
一般的には神様は信じてないが、死後の世界を信じている人もいれば、死後の世界は信じてなくても神様を信じている人もいると思う。
宗教的に一番問題なのは「神様も信じず、死後の世界も信じない」唯物論、無神論者だが…
この本では唯物主義者が行く地獄も登場する。先程の不倫と同じく現代の日本人にとって注目すべき地獄である。
陸軍士官は様々な地獄を体験するものの、あることをきっかけにトントン拍子に深い地獄から浅い地獄に上がり、天国まで上がっていく。
その描写に対して「単なる教育効果を狙ったフィクション」と取る向きもあるかもしれない。
だが、おそらくキリスト教であれ仏教であれ、正しい宗教の信仰心を持っている人からすれば、非常に説得力があると感じられる。
芥川龍之介の「蜘蛛の糸」には見られない天使の働きと、地獄から這いあがろうとする陸軍士官の姿勢は、リアルすぎるほどリアルなのである。